- 通関士は育児や家事のために在宅勤務できる?
- PC1台あれば進められる仕事?
- 将来的にフルリモートになりそう?
通関士は在宅勤務と相性の悪い職業です。
在宅勤務をするための制度は整っていますが、利用するのは暇な通関士限定でしょう。
通関業務の9割以上をPC1台で処理できるため、通関士の在宅勤務は進んでいます。
ただ、業務効率が落ちることに加え、業務量が激増するのが問題です。
この記事を読むことで、あなたは『在宅勤務する通関士が周囲からどう思われるのか』理解することができます。
通関士は、在宅勤務をすると周囲に迷惑をかける仕事です。
リモートワークのために通関士を目指す方、自身のメンタルとよく相談してください。

絶対に在宅勤務をしたくない現役通関士の私が詳しく解説します。
目次
通関士の在宅勤務は奨励されつつある
コロナ禍の影響で、通関士の在宅勤務が一層奨励されています。
財務省が主導となり、在宅勤務の障害となる制度は徐々に改正されるでしょう。
2021年8月時点、在宅勤務のための制度は次の通りです。
- 在宅勤務の条件が一時的に緩和された
- ハンコが必要な書類が激減した
- 原本提出が必要な書類が激減した
それぞれどのような変化があったのか解説していきます。
在宅勤務の条件が一時的に緩和された
コロナ禍の影響で、通関士が在宅勤務をするための条件が緩和されました。
『情報セキュリティ対策』だけすれば、通関士の在宅勤務は認められることに。
参考:税関資料”通関業務の在宅勤務の開始手続きの見直しについて”
通関士の在宅勤務が可能であることが発覚したのが現状です。
『作業効率の低下に嘆く企業』と『出社したくない通関士』が火花を散らしています。
コロナ禍の影響で、企業は通関士の在宅勤務を認めざるを得なくなりました。
根強い在宅勤務を希望する声が通関士から出続けるでしょう。
ハンコを必要とする書類が激減
税関に提出する書類に『ハンコ』が不要になりました。
押印のために通関士が出社する必要性は皆無です。
ハンコを押さないことが想定以上に通関士の出社を減らしました。
お客様が発行する書類に『ハンコ』が必要だったころ、通関士は業務に必要な書類を郵送で受け取っていました。
郵送で受け取った書類にミスがあると、訂正書類がまた後日郵送されてきます。
今ではお客様から書類の郵送なんてほとんど来ません。
PDFとして送付されるので、通関士は自宅PCでも内容を確認することができます。
原本提出が必要な書類が激減
税関に原本を提出すべき書類が削減されています。
通関士が税関に訪問する機会は減っているでしょう。
参考:通関関係書類の電子化・ペーパーレス化への取組みについて
現在、税関に提出する書類の大半は『PDF送付』で問題ないです。
超重要書類『原産地証明書』ですら、カラーPDFの送付で問題ないとされています。

原産地証明書は外国の公的機関が発行する書類です。
昔は、『全て』税関に原本を提出すべき書類でした。
この制度が始まる前、通関士は毎日のように税関に訪問し、書類を提出していました。
『担当が外回りだけの通関士』も存在したと聞いたことがあります。
現在は原本の提出が必要な書類はほとんど存在しません。
自宅PCからPDFで税関に送付すれば、通関業務の大半に対応することができます。
通関士の在宅勤務は、業務効率が一気に低下する
通関士が在宅勤務をすると業務効率が下がります。
作業効率50%減が多数というアンケート結果も。
参考:通関業連合会調査、在宅勤務4割が導入。業務効率低下 浮き彫りに
その理由は次の通りです。
- 在宅勤務を前提とした業務運用を採用していない
- 自宅には業務で使用する設備が無い
それぞれ紹介します。
在宅勤務を前提とした業務運用を採用していない
コロナ禍の影響が出るまで、通関士の在宅勤務は全く進んでいませんでした。
当然、通関士の業務フローは在宅勤務を想定しない流れになっています。
どの企業でも何らかの問題を抱えているはずです。
代表的なのは『貿易書類の渡し方』でしょう。
通関士は貿易事務担当者から貿易書類を受け取ります。
この時、何故か『印刷して手渡し』が横行するのです。

通関士は貿易書類を印刷してチェックするのが一般的。
過去、『印刷して手渡し』は親切な営業担当者の対応と言われていました。
通関士は貿易書類が見れないと仕事になりません。
在宅勤務に向けて、通関士は『印刷された書類をPDFに保存しなおす』のです。
通関士の業務フローは在宅勤務を想定したものとなっていません。
個人の努力ではどうしようもない非効率が発生します。
自宅には業務で使用する設備が無い
会社にある設備や機材は自宅にありません。
在宅勤務で使えるのはPC1台のみであり、業務効率が急落します。

通関士の業務に必要不可欠なのが『プリンター』です。
プリンターは通関業務の効率化に大きく貢献しています。
プリンターが最も力を発揮するのは、通関士が税関に書類を送付する時でしょう。
税関に送付する書類は1つのPDFファイルに保存する必要があります。
通関士はバラバラと手元に集まった書類をプリンターでまとめて保存するのです。
在宅勤務をする通関士はバラバラの書類を1つのPDFファイルに保存するために、大変な労力を要します。
在宅勤務をすると、出社する通関士にしわ寄せがくる
1人の通関士が在宅勤務をすると、出社している通関士が苦労します。
在宅勤務は余分な仕事を増やしてしまうのです。
その理由は次の2つです。
- 無駄な電話対応が生まれる
- 無駄な書類転送業務が生まれる
それぞれ見ていきます
電話対応が周囲にストレスを与える
通関士の在宅勤務は無駄な電話連絡を生み出します。
出社している通関士から反感を買うかもしれません。
通関士と税関のやり取りは基本的に全て電話で行います。
税関へ提出した書類について、通関士の元にバンバン電話連絡が来るのです。
出勤している通関士が電話を受け、代理で税関とやり取りをすることになるでしょう。

仕事で使えるスマホがあれば在宅でも税関との電話連絡は可能です。
連絡手段がメールしか無いことを理由に、在宅時の税関対応を断る通関士の話も聞いたことがあります。。。
税関からの電話を出社している通関士が受け、在宅の通関士に伝言する回数が非常に増加しています。
書類の転送業務が面倒すぎる
在宅勤務をする通関士のために、無駄な書類の転送業務が発生します。
出社している通関士の業務量が一気に増えています。
通関業務の大半は書類仕事です。
手元に書類が無いと仕事になりません。
在宅勤務をしている通関士の担当書類も問答無用で代理の通関士に渡されるのです。
結果として、『書類を全てPDFに取り、在宅の通関士へ転送する』業務が生まれます。
書類のPDF化と転送が本当に時間を取られます。
出社している通関士の無駄な業務が一気に増え、一部に負担が固まっているのが現状です。
まとめ
この記事は通関士の在宅勤務が今後どうなるかを解説しました
- 通関士の在宅勤務を後押しする制度が整っている。
- 通関実務は在宅勤務によって大幅な非効率となる。
- もともと忙しい通関士は在宅勤務する余裕が無い。
- 忙しい通関士はますます大変に、暇な通関士はますます楽になっている。

在宅勤務を積極的に行う通関士は周囲から反感を買います。
通関士は物流業界の中で在宅勤務をしやすい職業ですが、それを目的に目指すと後悔するでしょう。
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